
名前はかっこいいですが、実は問題自体はすごく簡単です。数学が苦手なかたも、楽しめる話です。
数学の小話についての記事もあるのでよかったらどうぞ。
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主張
響きが超かっこいい定理なわけですが、主張自体はすごくシンプルなんです。
\(a^k+b^k=c^k\)
を満たす自然数\(a,b,c,k\)は\(k>2\)のときは存在しないというのがフェルマーの最終定理の主張です。
ピタゴラスの定理、もとい三平方の定理を覚えていますか?直角三角形の各辺\(a,b,c\)に対し
\(a^2+b^2=c^2\)
が成り立つというものです。
三平方の定理では指数の部分が\(2\)なので、これをみたす自然数があるんですが、この指数部分が\(2\)より大きい数字になると、途端にその式を満たす自然数は存在しなくなります。
\(a^k+b^k=c^k\)を満たす自然数が無いという、すごく簡単な主張なのに、数学の天才たちは400年もこの問題に苦しめられました。
フェルマーの意地悪
このフェルマーというのは厄介な人で、証明を書かないで問題の主張だけを書くことで有名でした。間違っている主張もあるし、なかには正しい主張もあり、この点でも厄介でした。
フェルマーはこの”フェルマーの最終定理”の主張を書くだけ書いて、証明は書かなかったんです。なぜ書かなかったと思いますか?書かなかった理由は、この最終定理が書かれた紙の端のほうにひっそりとあったらしいんですが、”余白が足りなかった”んだそうです。もう少し正確にかくと
”真に驚くべき証明を見つけたが、それを書くには余白が狭すぎる”
と、証明を書くことを避けていました。
天才たちの挑戦
オイラー、ディリクレ、ルベーグ、錚々たる天才数学者たちはフェルマーの最終定理の限定的な証明を見つけました。
オイラーの公式、ディリクレ形式、ルベーグ積分、数学を築き上げてきたそんな天才たちでも限定的な証明しかできませんでした。
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具体的には
\(a^k+b^k=c^k\)
を満たす自然数\(a,b,c\)は\(k=3,5,7\)のときは存在しない、ということを証明しました。フェルマーの最終定理の主張は\(2\)より大きい全ての自然数\(k\)に対して言っているので、3,5,7だけでは全然足りません。
そもそも正しいの?
証明が完成しない期間が長すぎて、そもそもフェルマーの最終定理は正しいのか?と多くの数学者が疑問を持ち始めます。数学者人生を掛けて”本当は正しくないかもしれない”フェルマーの最終定理の証明を考えるのは、自分の人生をそのまま無駄にするかのようなものですから、この問題に取り組むのは命がけでした。
錚々たる天才数学者でも人生をかけるには大きすぎる問題と判断し、諦めざるを得なかった恐ろしい問題、それがフェルマーの最終定理なわけです。
証明は出来るの?
仮に正しかったとして証明はできるのか、ということも問題に挙がりました。400年もの間があれば、数学理論は発展していきます。数理論理の分野も発展し、無矛盾性だとか完全性だとか、証明ができるとはどういうことかという議論も活発になりました。
そのときに恐るべき命題が証明されてしまいました。それは
”証明も反証もできない問題が存在する”
ということです。つまり、証明が出来ず、かといって間違っているとも示せない、そんな問題があることが証明されてしまったのです。
となると、数学者たちが考えるのが
”もしかしてこのフェルマーの最終定理がそうではないのか?”
ということです。そう思うのも無理はないです。数百年も未解決の問題なんですから。もしそうだったら、この問題を証明しようとするのは全くの無駄になるわけです。
400年後しの証明
”ついにフェルマーの最終定理が証明されたぞ”というニュースは実は複数回ありました。そしてそのたびに、実はその証明には不備があったという茶番が繰り返されてきていました。
誰かがまた証明できたぞと豪語しても「はいはい、また不備があるんでしょ」と皆思うようになっていました。
アンドリュー・ワイルズがフェルマーの最終定理をついに証明できたと発表したときも、例に漏れず、周りの反応は冷ややかでした。実際、彼の証明には不備がありました。
フェルマーの最終定理はやっぱり証明が出来ない問題なんだ。21世紀近くにもなってあんな時代遅れの問題に人生をかけるのはバカのすること。そんな空気にも負けずに、アンドリュー・ワイルズは証明の不備をなんとか直すことが出来ないかと苦悩します。
それでもワイルズは、世界の数学者達が見つけたバラバラな理論のピースをきれいに集めて、一つの地図を作るかのように証明を完成させてしまいました。そこには複数の日本人も関わっていました。
数学の問題というより、フェルマーの最終定理は数学の歴史と言うべき問題かもしれません。
この数学史の流れは下で紹介する本の中で物語調に書かれています。数学が出来なくても読める、面白い話で、まるで映画をみているようでした。
本が苦手な私でも楽しくよめた本です。フィクションかと思わせるほど面白く、しかし全て現実に沿って構成されています。映画で例えるならビューティフル・マインドや、イミテーション・ゲームのようなストーリーです。
複数の天才たちが時代を超えて作用する、すごく面白い話でした。
まとめ
400年もの間、天才数学者たちを苦しめた数学史上最難の主張、フェルマーの定理。日本人を含む天才数学者たちの理論が時代を超えてアンドリューにヒントを与えました。アンドリューはそれらの理論を使ってフェルマーの最終定理の証明に挑み、一度は失敗するものの、1995年に証明が正しいことが認められた。
数学が好きな人、天才たちの物語が好きな人、そういう人はフェルマーの最終定理をめぐった過去の偉人達のお話を一度見てみてはいかがですか?