と言う頑固な人のために、虚数作ってみました。もう誰にも文句は言わせない。
fa-check-square-o高校生程度の知識で読めます。
そもそもの数字の分類
虚数\(i\)とは\(x^2=-1\)を満たす数のことを言う。
さて、こんな数xが本当に存在するんでしょうか?
と拒否反応を示す方もいるでしょうが、本当にそうでしょうか。
虚数の話をする前に、数字のいろんな分類について、まずは紹介します。
自然数の定義
自然数とはペアノの公理で定義される集合の元のことを言う。
ペアノの公理
- 自然数 1 が存在する
- 任意の自然数 a にはその後者 (successor)、suc(a) が存在する(suc(a) は a + 1 の "意味")
- 1 はいかなる自然数の後者でもない(0 より前の自然数は存在しない)
- 異なる自然数は異なる後者を持つ:a ≠ b のとき suc(a) ≠ suc(b) となる
- 1 がある性質を満たし、a がある性質を満たせばその後者 suc(a) もその性質を満たすとき、すべての自然数はその性質を満たす(出典:Wikipedia)
抽象的に定義されているので難しいですね。
一応紹介はしましたが、自然数とは1,2,3,...のことをさします。一番自然な数と覚えてください。
整数と有理数の定義
整数とは整っている数のことです。自然数の次に整っている数と覚えましょう。
整数は自然数と0によって定義されます。なんのことはない、...,-2,-1,0,1,2,...と続きます。
せっかくなので有理数も定義しておきましょうか。
有理数とは整数\(a\neq 0,b\)を用いて\(\frac{b}{a}\)の形に表されるものを言います。
\(\frac{2}{3}\)や\(\frac{-1}{15}\)なんかは有理数ですね。
無理数の定義
続いては無理数。皆さんご存知の\(\pi\)や\(\sqrt{2}\)などです。
ところで、ピタゴラスの定理はご存知ですか?
直角三角形の各辺の長さを\(a,b,c\)として、\(c\)が一番大きいものとすると\(a^{2}+b^{2}=c^{2}\)が成り立つ。
という定理です。中学3年生で習います。
$$3^{2}+4^{2}=5^{2}$$
なんかはよく見ますよね。
無理数ははじめは「存在しなかった」
$$a^{2}+b^{2}=c^{2}$$
この式をピタゴラスが発見した当時、無理数という数字は存在しませんでした。
「数とは有理数のことである」がまかり通っていた時代だからです。
無理数の存在を信じた者は死刑
世界は有理数で成り立っていると信じているピタゴラス教団の方達ですが、ある教団員が驚きの事実を発見してしまいました。
各辺の長さが1である直角三角形に関してのピタゴラスの定理についてです。
$$1^{2}+1^{2}=c^{2}$$
つまり
$$c^{2}=2$$
となり、斜辺の長さが無理数になることを発見してしまいました。
有理数の秩序を乱したとして、この数字の発見者はピタゴラスの弟子達により処刑されてしまいました。
もうお分かりでしょうが、この数字を我々は\(\sqrt{2}\)と呼んでいます。
「かつて存在しなかった数字」を我々は自然に受け入れてます。
虚数は存在しないと言う頑固者
虚数の定義はなんだったか覚えていますか?
虚数\(i\)とは\(x^2=-1\)を満たす数のことを言う。
有理数の世界ではありえない\(c^2=2\)という式を\(\sqrt{2}\)を導入してあり得ると考えた。
でも実際に実数が存在するかどうかの議論をしたことはありますか?
虚数の存在は議論したことがあるのに、実数(無理数)の存在については言及すらしたことがないという人は、無理数は存在しないというピタゴラス達の苦悩を、まるきり無視していることになります。
ピタゴラスたちのように、自分たちが受け入れられないものだけを拒み続け
と主張するわけです。
そもそも存在の定義は?
数が存在するかどうかの定義は何でしょうか?虚数が存在しないというには、3つの考え方があると思います。
- 数字なんてものは、概念を表すためのただの記号であって、そもそも存在なんてしない
- 現実世界を数学で記述する際に虚数は出現しないから、存在はしない
- 実数は存在する。けれども実数の2乗は正だから虚数は存在しない
これに関しては、数字そのものが存在しないと言われてしまえば、確かにそうです。概念の上での存在でしかありませんから。
でもそれを言ってしまえば、目の前にりんごがあったとして、そのりんごは存在することになるんでしょうか?
これに関しては、私たちが認知できる世界だけが本当の世界なわけでは無いので、虚数が存在しないという理由としては弱いです。
この最後の意見関しては、論外です。主張3を支持する人だけには、私は断固として反対します。
負の数に文句は無いのか
あなたが自然数1,2,3,4,5...の世界の住人だと考えてください。自然数以外は知らないんです。
その際、負の数とは何でしょうか?例えば\(-1\)とは何でしょうか?\(-1\)とは次の式で定義される数字\(x\)と言えます。
$$x+1=0$$
でも今、あなたは自然数の世界に住んでいるので、この方程式の解は見つかりません。
虚数の存在と同じ構造です。
無理数は受け入れるのか
次に、あなたは有理数の世界に住んでいたとしましょう。
有理数の世界はキレイです。有理数の四則演算は有理数になるからです。
ここまで完璧な世界に住んでいたとしたら、無理数の存在なんて考える余地はないですよね。
虚数だけかわいそう
虚数も同じです。
あなたが実数の世界に住んでいたら、存在するはずのない数となるわけです。
もしあなたが、負の数も無理数も学習段階で受け入れてきたのに、虚数だけを受け入れないというのなら、それは虚数へのイジメです。
実は無理数の構成が一番厄介
整数というのは自然数のペアで\((a,b)=a-b\)で定義できます。
有理数も整数のペアで定義できます。\((a,b)\)を\(\frac{a}{b}\)と見なすということです。
複素数は実数のペアとして考えられます。\((a,b)\)を\(a+ib\)と見なすということです。
唯一、この方法で拡張できないのは実は実数だったりします。
なので実は「複素数よりも無理数の存在の方がギャップがある」と知って頂きたいのです。
そこで実際に虚数を作ってみた
ここでは、複素数をしっかりと定義したいと思います。
高校数学みたいに\(x+iy\)とするんじゃないですよ。
そもそも\(i\)の存在がわからないわけですからね。
しっかりと実数だけを用いて複素数を定義していきます。
数字の固定観念を捨てる
そのためにはまず数字の固定観念を捨ててもらいます。
数字とは何か?
数字というのは1とか2とか、そういった具体的なものでなくても良いのです。
例えば「りんご1」という文字を数字の1とみなしてみましょう。「りんご2」は数字の2とみなし、同様に「りんご\(x\)」は数字の\(x\)とみなすことにしましょう。
すると「りんご\(x\)」と\(x\)が一つ一つ洩れなく対応していますよね。
つまり、\(x\)を数字として見ることと「りんご\(x\)」を数字として見ることは何ら変わらないわけです。
座標を数字とみなす
有理数とは整数\(n,m\)を用いてできる\(\frac{n}{m}\)のことを言います。
二つの整数で有理数が出来るということは、二つの整数のペア\((n,m)\)を\(\frac{n}{m}\)とみなしてもいいですよね。
これと同じくして、座標を数字としてみなすこともできます。
数字とみなす方法
座標\((x,0)\)を実数\(x\)と同一視しましょうか。
「りんご1」と同じ議論で、一つ一つが漏れなく対応しているので、同一視はできますよね。
ひとまず、\((x,0)\)が実数だと考えられたのは良いとして、次のステップは\((x,y)\)を「数」だとみなすということです。
\(y=0\)の時は\((x,0)\)となってこれは実数と見なせますね。
つまり、\((x,y)\)の形をしている新たな「数」というのは、実数\((x,0)\)を含んでる、より大きな数の集まりということになります。
有理数の場合は\((n,m)=\frac{n}{m}\)で数字とみなしましたが、今から私達がやろうとしていることは\((x,y)=x+iy\)という数字を作ろうとしています。
座標に演算を定義する
さて、実数\(x,y\)に対して無理矢理\((x,y)\)を数だと見たところまでは、ついてこれていますか?
ここからは数\((x,y)\)に対して、四則演算を定義してあげようと思います。
和の定義
新たな数\((x_1,y_1)\)と\((x_2,y_2)\)に対して、足し算を次のように定義します。
\((x_1,y_1)+(x_2,y_2):=(x_1+x_2,y_1+y_2)\)
左辺は新しい数の足し算ですね。これを右辺で定義してあげてます。
右辺のカッコの中身をよく見て見ると\(x_1+x_2\)と\(y_1+y_2\)が出てきていますね。これら自体は実数ですから、新たな数として\((x_1+x_2,y_1+y_2)\)を考えられますよね。
積の定義
次は掛け算の定義をします。少し異質ですが、積の定義はこれ。
\((x_1,y_1)*(x_2,y_2):=\)
\((x_1x_2-y_1y_2,y_1x_2+x_1y_2)\)
意味は特に考えないでくださいね。これを新しい数の掛け算と定義しただけなので。
座標を複素数とみなす
最後の大仕上げです。\((x,y)\)のことを、思い切って複素数と呼んでみましょう。
一番最初に、\((x,0)\)を実数と見立てたことを覚えていますか?足し算の定義を使えば\((x,y)\)は次のようにかけます。
$$(x,y)=(x,0)+(0,y)$$
\((x,0)\)は\(x\)と同一視していることを思い出せば
$$(x,y)=x+(0,y)$$
となります。
ここで\((0,y)\)の正体を見ていきましょう。試しに\((0,y)\)を2乗してみると
$$(0,y)*(0,y)=(-y^2,0)$$
となります。右辺に関しては二つ目の成分が0なので実数と見なせますね。思い切って右辺を\(-y^2\)に直しちゃいましょう。
$$(0,y)*(0,y)=-y^2$$
何か気づきましたか?もうちょっとわかりやすく、\(y=1\)を代入して見ましょうか。
$$(0,1)*(0,1)=-1$$
おやおや?トドメに\(i:=(0,1)\)と定義しましょうか。すると上の式は次のようにかけます。
$$i^2=-1$$
はい。虚数、できました。
さて、最後の仕上げです。\((y,0)\)をyと同一視して、\(i=(0,1)\)だったことを思い出せば、掛け算の定義を用いると
\(i*y=i*(y,0)\)
\(=(0,1)*(y,0)=(0,y)\)
が成り立つと言えます。よって\(i^2=-1\)となる数を用いて
$$(x,y)=(x,0)+(0,y)=x+iy$$
が導けました。複素数の出来上がりです。
よって虚数は存在するQ.E.D.
同一視を駆使して座標を無理やり新しい数だと考え、そこに新しい足し算と掛け算を定義したら虚数がたまたま見つかりました。同じ数をかけたのに-1になる数です。
虚数を作って、複素数も作りました。もう、虚数が存在しないなんて誰にも言わせません。